訥々とした行間

映画『リトルダンサー』(原題 Billy Elliot)
[fmr. IMDB / tomatometer]

リトル・ダンサー BILLY ELLIOT [DVD]

リトル・ダンサー BILLY ELLIOT [DVD]

久々にいい映画を観させていただいた。
スコットランドニューカッスル・ダーラム。
ちょっと訛りがキツイ日本で言うなら東北の、或る炭坑町に暮らす男の子が「踊る」ということに魅せられていくお話。スト中に燃える炭坑夫の兄、貧しい境遇に喘ぎながら母を思い出しては泣く父、小さい頃ダンサーになりたかったおばあちゃん。情熱を傾けて個人レッスンしてくれるバレエの先生、支えてくれる近所の「女装好きな男の子」。ふとした時に襲われる母への郷愁。
東北弁に似てものすごい訛っていて(ゴーディ訛りというらしい)は、半分くらいしか解らない(笑)→英語字幕で観た。でも正直言葉が分からなくても充分見れる映画。
観客の気持ちがついてくる時間をとって、心の動きを丁寧に追ってゆく。緩慢と進む時間。画に動きをつけるのは、炭坑ストと警官隊の衝突とダンス。
ついに息子の努力に気付き、自分の主義主張を曲げてでも、なけなしの金を集めてでも、チャンスを与えようとしたパパ。
もうこっからが全部泣ける。国立バレエ学校の面接へ。
「ロンドンて行ったことある?」「街を出たことがないな…」「だって首都だよ!」「…(ロンドンに)炭坑はあるのかな」「もーそれしか頭にないの?!」
国立バレエ学校の面接でインテリにバリバリのRPで小難しい質問を受け、東北弁で返す父。子供を思う気持ち、家族を思う気持ち、近所の人達の気持ち。全てがとにかくあったかい。
ミュージカルは既にマスターピースとなっているようだけど、個人的には映画で充分かも知れない。これを静かな視点で描いた包容力に、賛辞を捧げたい。