今日は死ぬのにもってこいの日だ

受け容れられず、ただ呆然としている。
 小さな命は終りを迎えようとしていた。二週間前から食べるのが辛そうだった。一週間前からは点滴だけで生きていた。数日前から手足が冷たかった。意識を保とうとしても眠りに引き寄せられていた。リビングからキッチンまでの距離が途方もなく遠そうだった。そうして自らの痛みと引き換えに、失うことへの心の準備をする時間を家族に与えてくれた。この子の母親もそうだった。
終に一緒に眠っていた明け方4:45、21年9ヶ月を経てその容れ物は機能を停止した。袂で生まれて、腕の中で逝った。奇麗な桜色の柔らかい肉球にもう触れることは無い。
 生まれてくれてありがとう。一緒に生きてくれてありがとう。あったかくて柔らかい時間をありがとう。心の準備をする時間をくれて本当にありがとう。あなたがたくさん与えてくれたものを私の形にしてこれからも渡そう。私から渡せるものは、もう愛だけなんだ。誰にも終わりはいつか必ず訪れる。また次の世で出逢いましょう。