兜虫は砂糖水でしか育たぬ

ミシマダブル「わが友ヒットラー
Bunkamuraシアターコクーン

初日 中2階上手

どちらか選べと言われたら、圧倒的にこちら。
シャンデリアが燭台になった以外セットは同じ。聳え立つ上演時間と浴びせられるであろう台詞量に観劇する側ながら愕く。連日でこの消費量なのだから、マチソワ日の演者の消費エネルギーといったら如何ほどか。
この台詞量にもかかわらず、御大二方は張ることも気負うこともなく台詞を伝わる言葉として伝えてくるのは変わらず圧巻だ。誠実と忠誠と友情を棒にしたレームに対し木場シュトラッサーが圧巻。タイトルロールも負けじと噛むことなく、良い経験をさせてもらっているのだなと気を抜いた三幕のとある一瞬、会場が静まりかえった。実際クルップは三島の意図に反して、あの瞬間に気付いてしまったように見えた。数年前の新感線の時は微塵も思わなかったが、成長したんだなぁ。もう一度観たい。
ところで狂気に浮かされるヒトラーが何かに似ている、と思ったら舞台上の動線が古田さんだった。殺陣でああいう軌跡をよく描くような気がする(笑)
実在のヒトラーワグネリアンだった、戯曲中もリングがよく言及されている。演説とか夜明けとかラグナロク!とかそんなことですか

裏切られる女性の誠実の論理的構築を試みたサドに対し、誠実な男性を裏切る友情を「兜虫を砂糖水で育てる」ように戯曲化、二元論に弱いので会場にて戯曲を購入。

サド侯爵夫人・わが友ヒットラー (新潮文庫)

サド侯爵夫人・わが友ヒットラー (新潮文庫)

三島を読む度に己の日本語を恥じます。日本語は美しい。是非こちらをもう一度観たい。